知のフィールドワーク 28 (スキージャーナル1998.3月号)
カービング・カービング・カービング
 98/98シーズンは、カービングスキーが大フィーバー。今シーズンのスキー界の『流行語大賞』は「CARVING」で決定である!! そこでカービングスキーの話を2、3拾ってみた。

【カービング・ジュニア】
スイススキー連盟、テクニカルコーチ、マウロ・テリビリーニの話:
マウロは昨年4月、(財)全日本スキー連盟(SAJ)アニバーサリー(公認スキー学校大会)に垂スチームの一員として参加。スイスのカービングスキー指導の実態を披露してくれた。そして彼とは、10月にノルウェーで開催されたインタースキーの理事会で再会。 「ニッキー(私の外国人からの愛称、今スイスじゃ、子供たちにどんどんカービングスキーを教えているんだ。ここ何年かスイスでもスノーボードが大人気。今までスキーをやったことがなかった子供たちまでいきなりスノーボードをやるようになっていたんだ。それが先シーズンくらいから、スキーをやっていてスノーボードにも興味を持っていた子供も、スノーボードしかできない子供もみんなカービングスキーにトライするようになったんだ。きっとスキーができる子供たちはカービングスキーでスノーボード感覚を味わいたかったし、スノーボードができる子供たちは、カービングスキーで「スキー感覚」を味わいたかったんじゃないかな。だから日本の子供たちにもぜひカービングスキーの楽しさを教えてやってほしいんた!)

【カービングスキーのウィーク・ポイント】
(財)全日本スキー連盟教育本部T・Kさんの話:去年12月、SAJ中央研修会での夕食後の雑談で。
「イヤー、カービングスキーにはまいったヨ。中級くらいの人たちのグループレッスンをしてたんだけど、ボクはもちろんカービングスキー。彼らは従来のスキーだったんだ。急斜面でいかにスキーをずらさないか。スキーを切っていけるか。いわゆるカービングを教えていたんだ。指導者のこっちはカービングスキー。教わる側はノーマルスキー。これじゃもちろん勝負にならないヨね。そしてレッスンが終わって下のリフト乗り場に集合ということにして、ワンラインで滑り出したんだ。もちろん急斜面ではボクのスキーはおもしろいようにキューンと切れ上がっていくのに、後をついて滑ってきた人たちのスキーはズルズルっていって落とされちゃうんだ。テクニックとマテリアルが違うんだから、どうしようもないわけだヨ。ところが最後にやたら緩い斜度のほとんどない斜面に入って、ただ真っ直ぐ滑りだしたら、今まで後ろから必死についてきた連中がビュンビュンみんなボクを追い抜いていくんだ。先頭で滑っていたのに集合場所に着いたら、スキー教師のボクが最後に到着。みっともなかったネー。でもどうしようもないんだヨ。だってみんなのスキーとボクのじゃ10センチから20センチは長さが違うんだもん。直滑降のスピードじゃかなわないんだヨ。早くどっかのメーカーがタラタラの緩斜面で真っ直ぐ滑るときはボタンを押すと「ビューンビューン」って20センチくらい長くなるSFX的なスキーを、カービングスキーを履いたスキー指導者のために開発してくれないかナー」

【カービングスキーのスウィートスポット】
去年の夏、オーストリアのキッツシュタイン氷河スキー場で、リッチー・ベルガーからカービングスキーの指導を受けた私の次女(14歳)の話:
「リッチーさんに教えてもらった後、フリーで滑ってたら1回か2回だけど、スキーが自然にキューンって曲がってったことがあったの。何かそのときだけ、とってもうまくなったみたいで、すごく気持ちよかったヨ」。どうやら彼女は偶然にも、カービングスキーのスウィートスポットってやつに巡り会ったらしい。ちなみにテニスでもゴルフでもスウィートスポットっていうやつをまったく知らない私は、リッチーとは何回もいっしょに滑っているのに「カービングスキーのスウィートスポット」にもまったく出会ったことがない……。

【スキー板について気がついたおまけの話】
これはカービングスキーに限らないが、たまたまカービングスキーのニューモデルを紹介したスキージャーナル刊『スキーセレクション1998』を読んでいて、いや見ていてきがついた話:
スキーの板には、2種類あるのもを御存知ですか?それは右向きと左向きなのです。どういうことかと言うと、スキーのトップ、つまりバインディングのトゥーより前の部分には、ほとんどのスキー・メーカーがブランド名を記しています。その文字がスキーのトップからセンターに向かって描かれているタイプ、スキーを横にしたとき、左に向かって進むように、左にトップがくるようにして奥と、文字が読めるものと、逆にセンターからトップに向かって描かれていて、右に向かって進むように、右にトップがくるようにして置くと文字が読めるものとがあるのです。人間の心理として、魚でも車でも描くときは(魚は食べるときも)「トップ」は左にあるほうが普通のような気がします。でも陸上の100m競技のコースは、正面スタンドから見て左から右に走っていますね。ちなみに前記の雑誌に載っていたブランドでは「A、O、Y」が左前で「D、E、F、H、K、N、R、S、V」が右前と怏E派揩ェ圧倒的に多いようです。まあ、どうでもいい話なんですが、あなたのスキーはどちらが前かスキーを立てかけなおで、横にして置いてみてください。

 最後にちょっとCMに入ります。3月下旬に野沢温泉スキー場で国際技術選手権大会に出場した選手が中心となって指導してくれる『カービングスキー・サミット』が開催されます。カービングスキーを試乗したり、講習を受けたりする予定です。単なる流行に終わらせないように、もっともっとカービングスキーに接してみてください。そうすればマウロの言うように「新しいスキーの楽しさ」を見つけられるはずです。
田和夫
1953年生まれ。現在の日本のスキー界でもっともドイツ語に堪能で、その活動は単に「通訳」という範疇を超えている。言葉だけでなく、心も拾い上げる貴重にして希有なタレントの持主