知のフィールドワーク 8 (スキージャーナル1994.3月号)
インタースキーって何ですか?
「インタースキーって何ですか?」
1991年、サンアントンで行われた第14回インタースキーの時から招致活動に加わり、現在15回インタースキー野沢温泉大会の組織委員会事務局に席を置く私が、今までに何度となく聞いた「インタースキー」に対する、野沢温泉村村民、一般マスメディア、一般スキーヤー、そして日本国民の声である。

インタースキーとは正式には「世界スキー指導者会議」のことであり、4月に1度世界中のスキー関係者が集まり、自国のスキーに対する考え方を発表し、意見交換し、親善交流する場所である。ところがこういう説明をすると、一般スキーヤー、一般大衆(スキーに多少興味を持っているが、それほどのめり込んでいない人たち)は、「なんだ。スキーの専門家の会議か。オレたちは関係ないですね。」といい、一般マスメディアは「扱いにくいですね、やはりスポーツはオリンピックみたいに競技性があって、汗と涙の「根性物語」がないと一般受けしないんですよ・・・」という。

一方で、スキーの専門家たちは、昔のフランス、オーストリアの大技術論争があった時代を懐かしみ、ここ数回のインタースキー(バンフ、サンアントン、そして今回の野沢温泉大会)に対し、「曲がり角にきたインタースキー」といった批判を浴びせる。インタースキーはコングレス(会議)なのか、フェスティバル(お祭り、イベント)なのか?

どうして、どちらかに決めなくてはいけないのだろうか。かつてのような技術論争がなくなり、世界の技術はひとつになってきたとはいえ、インタースキーはあくまでもスキーに関連する各国の人が、指導法であるとか、スキーマーケティングであるとか、環境問題、傷害問題、新しいウィンタースポーツの流れ(スノーボード、モーグル等)を話し合う場であり続けるべきものである。

しかし、日本の1500万人といわれるスキー人口のほんの一部の人のみの参加するコングレスにしておくこともない。一般スキーヤー、そしてスキーをやったことのない人にも興味を持たせ、理解できるようなプログラムを用意し、スキー本来の楽しさ、すばらしさを知ってもらうこと、その結果スキー人工の拡大を図ることも大切なのである。インタースキーの指令は、インタースキー委員会会長のホヒピラー教授もインタビューの中で答えていたはずだが(私が通訳として立ち会ったので間違いないと思う)、「コングレスかフェスティバルか」ではなく「コングレスとフェスティバル」なのだと思う。

実際、来年1月21日から28日まで野沢温泉で開催されるインタースキーのプログラムでは、「技術デモ」(各国の初・中・上級者の技術を演技するもの。今までは比較技術と呼ばれていた)、「ワークショップ」(いわゆる講習会、技術デモの内容を更に雪上講習で理解してもらう)、そして「講演」(同時通訳システムによるまさしく「コングレス」)がいわゆるスキー専門家(コングレス派)の人たちのためのものであり、「アルペン/ノルディック・ショー」(今まではナショナルデモと呼ばれていたもの。1日5カ国が次々に見せるスキーデモンストレーション)や、開・閉会式、1月27日夕方からの「合同デモ」(世界中のスキー教師による集団演技、人文字や証明を使った素晴らしいショーになる)は、スキーの素晴らしさを、一般スキーヤーばかりでなくTV等のメディアをとおしてスキー未経験者にも充分理解してもらえるプログラムとなっている。一般スキーヤーが技術デモや講演を見たり聞いたりしても面白くも何ともないし、スキー専門家が「アルペンショー」を見れば、「インタースキーはどこへ行ってしまうのか」と嘆くかもしれない。確かにクラシックコンサートとアイドル歌手のコンサートを一緒にやってしまうような面もあり、それを両立するためには受け手の理解と、十分なインフォメーションがなければならない。

しかし、私は「インタースキー」が少なくとも日本というスキーのビッグマーケットの中では、単なる専門家の閉ざされた会議として終わるのではなく、スキー競技の速さ、そして凄さ(オリンピックで十分味わってもらったと思うが)とは、ひと味違ったスキーの楽しさ、素晴らしさを味わってもらえるような会議、イベントであって欲しいと思う。

来年のインタースキー期間中、ダウンヒルレースがあるわけではないので、メイン会場の日影ゲレンデ以外は、野沢温泉スキー場のどこでも自由にスキーができる。宿も外国人選手団分は既に確保してあるので、それ以外はまだまだ十分に空いているはず。スキーは見るスポーツでなく、Do Sports。でも、思う存分滑る合間に、世界のトップデモンストレータの滑りを目の当たりにして、スキーの素晴らしさを体験してもらいたいと思う。

私は今、これ以上「インタースキーって何ですか?」の答えを出すことはできない。その答えは、来年1月21日〜28日、第15回インタースキー野沢温泉大会を何らかの形で「体験」された方に、言葉以上のもので味わっていただけると信じている。


田和夫
1953年生まれ。現在の日本のスキー界でもっともドイツ語に堪能で、その活動は単に「通訳」という範疇を超えている。言葉だけでなく、心も拾い上げる貴重にして希有なタレントの持主