月刊スキーコンプ Vol.297 page40-43
月刊スキーコンプ 2004.10月号 ジュニアレーサーに贈る
「効率の良いトレーニングマニュアル」
第1回・股関節と骨盤を動かして高いバランス能力をゲット!
世界を目指して日々努力しているジュニアレーサーたち。特に中学生や高校生になれば、それぞれ全国レベルの大会も行われるようになり、その競争はより激しくなってくる。そこから世界へと道を広げるには、是非とも効率の良いトレーニングを行ないたいものだ。そこで、ここではジュニアレーサーの育成で実績を残してきたユニティスキーレーシングが、効率の良いトレーニングの方法を紹介する。
構成 / ユニティスキーレーシング(USR)
文 / 上林卓司(USRディレクター・T.C.S.)、金田俊範(USRトレーナー)
モデル / 栗山太樹(ガーラ湯沢・株式会社アルファフォーラム)
写真 / 株式会社スキーコンプ編集部
■プロフィール
金田俊範(かねだとしのり)
76年8月5日生まれ。宮城県出身。東北福祉大学スキー部出身。卒業後は整体の専門学校へ。その後、プロアスリートや一般の方に体のコンディショニングや運動方法などの指導を行なう。現在はサロモンチームのトレーナーも務めており、04シーズンは技術選で柏木義之選手などサロモンチームの選手の活躍を支えた。ユニティスキーレーシングトレーナー
負荷が大きくなるとより正しい姿勢が重要になる
現在のアルペンスキーは、サイズが短く、サイドカーブはきつく絞られるようになり、操作性と雪面のグリップ力は、格段にあがっています。この影響をうけて技術レベルも驚異的なスピードで向上し、その滑走スピードも非常に高くなってきています。
.滑走スピードが上がるという事は、体にかかる負担も大きくなってきているという事です。特に今のスキー技術のラインは直線的なラインを通ります。その為にも瞬間的なエッジングが必要とされ、一瞬のうちに体重の何倍もの負荷が身体にかかります。
コースの状況によって変わってはきますが、ジュニアレーサーのように、成長度合いもバラバラで筋力も十分でない選手たちがこの負荷に耐えながら滑走する為には、正しい姿勢や体の使い方が非常に重要になってきています。スキーだけに限らず、すべてのスポーツにおいて正しい姿勢や、体の使い方は、運動パフォーマンスを向上させることはもちろん、故障や怪我の予防につながるのです。
ジュニア期には、どうしても技術ばかりにとらわれてしまいます。スキー技術(スキル)というよりも、まずはスキー動作(動き・ベーシック)を向上するためにはどうすべきかを考える事が、トップレベルに行くための第一条件になってくると思います。ではまず始めに、スキー動作に必要な基本となる身体の使い方を説明したいと思います。
1、体軸の中心である骨盤の前傾姿勢をとる。骨盤を高い位置で前傾させる事により、前後左右の動作にすばやく対応ができ、なおかつ腹筋群・大腿部の力がはいりやすくなりボディバランスが保てるようになります。
2、股関節(2軸)を意識した左右の重心移動の動作を意識する。この動きには股関節や臀筋群の柔軟性が必要になってきます。
骨盤が寝てしまった悪い例
骨盤が高い位置で前傾した良い例
3、体幹部・腰・膝・足関節を中心に体軸を斜めに倒す。瞬間的に動くためには、軸を作らなくてはなりません。例えば膝だけを内側に入れようとすると、X脚になりやすく、「腰が回る」原因のひとつとなります。腰だけを内側に入れようとすると「腰が開く」状態になりやすいです。スクワットジャンプをイメージしてください!
高くジャンプするためには、腕の振りや上体の伸展動作も必要ですが、第一に股関節・膝関節・足関節を伸展させて、下半身で大きなパワーを発揮する必要があります。この動きに体幹から上肢へ連動しながらジャンプ動作が行われます。この動きの中で一つでも軸となる関節がずれていると高く飛ぶ事ができなくなります。
右の重心の移動を意識すると股関節の柔軟性が重要になる
スキー動作はこのジャンプ運動に似ており、ターン時に体幹部・腰・膝・足関節の軸が常に直線のラインを作っていないと、うまくスキーの反動を伝える事ができなくなります。
全身で軸をつくった良い例
腰だけが内側に入り開いてしまった例
腰だけが内側に入りX脚になった例
この3つの身体の姿勢や使い方が、今のスキー動作には必要な基本的な動き方になります。1の骨盤の前傾姿勢をとるためには、骨盤自体の動き(モビリティー)をつけるエクササイズが必要になってきます。
2の股関節を意識した左右の重心移動では股関節回りの柔軟性が必要になってきます。
体軸をうまく使えるようになるとスキー動作がバランス良く保てるようになる
カービングスキーで発生する大きな負荷に堪えるためには、全身を使った動きが必要になる
3の軸を斜めに倒す動きには筋力・持久力・瞬発力・柔軟性、プラス「体幹を中心とした上肢下肢の力の伝達」が必要になってきます。いわゆる体幹部の強化が必要になってきます。腹筋・背筋・臀筋・上肢下肢との連鎖的トレーニングをすることにより、体軸がうまく使えるようになり、スキー動作がバランスよく保てるようになります。
今現在トレーニングをすでに開始しているジュニアの選手がほとんどだと思いますが、今回紹介するトレーニング方法はボディバランスを向上させる為の基本的なエクササイズ方法です。このほかにもランニングや柔軟・筋力トレーニングと必要なトレーニング方法はたくさんあります。その中にでも今回紹介するエクササイズを取り入れてもらい、ジュニア選手のレベルアップにつながればと考えています。
股関節の柔軟性向上のためのストレッチ
股関節の動きを良くする事により、左右の体重移動がスムーズに行なえるようになります。その他にも臀部や背中の筋肉の柔軟性を保つ事により、腰痛予防にもなります。目安として各種目20秒〜30秒伸ばしてみてください。また、必ず左右同じように行なってください。
ストレッチは大変に重要。中には準備運動程度に考えている選手もいるが、極めて重要なトレーニングと位置づけて確実に行なうようにしたい
[1] だるまストレッチ(腰背部)
体を丸め膝の裏を両腕で抱えます。頭を上げ腹筋に力を入れます。息を吐きながら20秒くらい行ないましょう
[2] だるまストレッチ(片足)
片足ずつ行なうと左右の差をはっきりと感じることができます
[3] 臀筋(ヒップストレッチ)
足を組んで片足を抱え込みます。臀部の筋肉が伸びます
[4] ハムストリングストレッチ
片足を90度の角度で上げて、つま先を自分の方に向けます。この時頭を浮かせているのがポイントです。足を上に伸ばした状態で10秒静止し、また膝を曲げて伸ばすという動きを10回程度繰り返します
[5] 臀筋(トリプルストレッチ)
片足を伸ばしもう一方の足を曲げて上体を倒します。この時、体を倒す方向を変えると、お尻の筋肉の伸びる方向が変わります
[6] 腸腰筋のストレッチ
片方の膝を立ててもう一方の膝をつきます。上体を反り左右の下腹部の筋肉を伸ばしてください
[7] 大腿部のストレッチ
6の上体から後ろに伸ばした足を腕で引き上げます。大腿部の前部の筋肉が伸びます
[8] 大腿部外側のストレッチ
壁などにつかまり、壁側の足を外に伸ばし体を傾けます。大腿部の外側が伸びます
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