月刊スキーコンプ Vol.299 page64-66
月刊スキーコンプ 2004.12月号 ジュニアレーサーに贈る
「効率の良いトレーニングマニュアル」
第3回・ショートスキーを使用した基本トレーニング
世界を目指して日々努力しているジュニアレーサーたち。特に中学生や高校生になれば、それぞれ全国レベルの大会も行われるようになり、その競争はより激しくなってくる。そこから世界へと道を広げるには、是非とも効率の良いトレーニングを行ないたいものだ。そこで、ここではジュニアレーサーの育成で実績を残してきたユニティスキーレーシングが、効率の良いトレーニングの方法を紹介する。
構成 / ユニティスキーレーシング(USR)
文 / 上林卓司(USRディレクター・T.C.S.)、大瀧詞久(USRコーチ)
写真 / 株式会社スキーコンプ編集部
■プロフィール
大瀧詞久(おおたきのりひさ)
1977年3月29日生まれ。長野県野沢温泉村出身。飯山南高卒業後ストラットンマウンテンPG入学。その後地元でジュニアの指導にあたる。全日本女子ナショナルチームアシスタントコーチ、D・バーチレースアカデミーでの研修を経て再び地元ジュニアの指導にもどる。今シーズンよりUSRコーチとしてジュニアだけではなく幅広い層のスキーヤーの指導にあたる
ショートスキートレーニングとは?
ショートスキーでトレーニングをする事を考えると、一般には競技スキーのトレーニングとはかけ離れているように思いがちですが、ショートスキートレーニングこそスキー運動に必要なベーシックを習得する上でもっとも有効な基本トレーニングのひとつです。マテリアルの進化に伴い、ジュニアレーサーの技術レベルや滑走スピードがあがり、身体にかかる負荷も大きくなってきています。ショートスキーを使い様々なバリエーションのベーシックトレーニングを行なうことで、正しい姿勢や体の使い方、バランス感覚の習得やリカバリー能力向上を可能にし、あらゆる状況にも対応できる技術を身につけることができるはずです。
体で感じるベーシックトレーニング
みなさんもご存じのとおり近年スキーのマテリアル事情は大変進歩し、誰でも自分の理想とするスキーパフォーマンスを容易におこなうことが出来るようになってきています。それに伴い姿勢や体の使い方が正確におこなえない選手でも、あるレベルまでの滑りは可能になり、レースでも年齢が低いうちはそれなりの結果を出すことも可能になっているのが現状です。
スキーは感覚スポーツであり、ジュニア期に体験・習得した運動の感覚がその後のレベルアップに大きく影響してきますので、普段のトレーニングで何も考えずにマテリアルに頼った滑りをしていると間違った感覚を持ってしまい、それが大きな落とし穴になりかねません。特に、ジュニア期のレーサーには言葉で説明することも重要なのですが、実際に身体で感じる感覚を取り入れたトレーニングによってより効果的で理解度が深まることも多いはずです。
そこで、ショートスキーは“体で感じる”というテーマにおいて、ミスやごまかしの効かない敏感なトレーニングマテリアルのひとつになってくるのです。
簡単なスキー操作の難しさと重要性
より高いスキーパフォーマンスをおこなうためには、より正確な基本トレーニングが必要とされます。現在使用されているスキー(カービングスキー)でベーシックトレーニングを行なうと、ミスやリカバリーをマテリアルが補ってくれることも少なくはありません。なかなか自分の間違った滑りに気付かない選手が多く見られ、形だけを真似てごまかすことも可能です。しかし、雪面への接地面積が少ないショートスキーではバランスがとりづらく、正確な姿勢や正しい体の使い方が出来ないとスキーがぶれてしまい思うようにターンする事が出来ないため、より正確なスキーコンタクトが要求されます。
足裏感覚は、スキーという競技のなかでは最も重要とされているもののひとつです。ショートスキーを履くことによって雪面に最も近い足裏感覚をより敏感に感じられる事ができ、実際にその感覚を体で感じ、膝から骨盤そして全体のバランスへと上手く組み立てる事が出来るはずです。
このように簡単だと思われがちなベーシックトレーニングも、ショートスキーを使う事によって難易度が上がりますので、より正確なバランスやポジショニングを意識するための効果的なトレーニングになります。もちろんショートスキーで高速ターンや悪雪でのフリースキートレーニングを取り入れる事によって、滑走中の集中力やリカバリー能力を向上させることも可能です。
より質の高いテクニックへの方向性
近年、日本のジュニアレーサーは世界的に見てもテクニカル面では質の高いスキーパフォーマンスを行なっているように思われますが、年齢を重ねるごとに基本動作の重要性を忘れがちになり、ベーシックトレーニングを疎かにしてしまう選手が多いのが現状だと思います。特に、滑りや成績が伸び悩んでいる時などは、正確な基本動作(ポジション・バランス)に原因があることが大半だと思います。そのような時に、ショートスキートレーニングを行なうことで自身の滑りを再確認し、更なるステップアップへの方向性を見出すことが可能になるのではないでしょうか。ジュニア期にショートスキートレーニングを取り入れることで基本動作を体で感じ、それを習得することでより鋭い感覚や質の高い運動パフォーマンスを養うことが可能になりますので、世界のトップレーサーへの道も開けるはずです。
ショートスキートレーニングもそのひとつだ
ジュニア期には色々なトレーニングを経験した方が良い
長いキャンプなどではトレーニングのバリエーションが多い方がモチベーションを維持できる
文/上林卓司
ショートスキーを使用した基本トレーニング
[1] 上部の腹筋
理想的なポジション
片足のスキーをはずして骨盤が
前傾し腿が立っている状態
骨盤、腿が寝ている状態
脚を前にもっていくと骨盤、腿が寝てしまい踵よりの重心になり、後ろに持っていくと骨盤が前傾し、腿が立って重心位置もセンターになることが確認できます。実際に骨盤がどうなった時に足裏感覚(重心位置)はどう変わるのかを身体で感じることができます。
[2] スキーを脱いで基本のポジションの確認
自分と同じくらいの体重の人を背負いポジションを確認します。骨盤、腿が寝て上体が腰から折れてしまうような姿勢だとすぐ疲れてしまい、長く背負うことができなくなります。骨盤が前傾し、腿が立っている状態で上半身の前傾角と足首の前傾角がほぼ平行に保たれている姿勢であれば、あまり疲れることもなく背負うことができるはずです。1番楽に背負っていられるポジションが、その人にとっての最適なポジションになると考えられるでしょう。
[3] ショートスキーでまずはフリースキー
ショートスキーでも、基本ポジションを意識して背中を丸めない(背筋を少し張った状態で骨盤を前傾させ、腿を立てる)ようにすることが大事です。またショートスキーでは、荷重ポイントが悪くなるとスキーのブレが非常に大きくなってしまいますので、スキーがブレないポジションを探していくことが足裏感覚を鋭くし、より正確な基本ポジションを体得することができるようになります。はじめはスピードコントロールができるように、緩斜面でおこなうようにしましょう。
[4] ノーストックでフリースキー
バランスをとるために手を前方に出し、身体の幅よりも広めに構えて基本ポジションを意識します。ターンをする際に内側の手が後ろに引けたり下がったり、外側の手がスキーより内側に入ってこないようにして、常にフォールライン方向に両手を意識して構え、みぞおちから下の下半身の動きを使いながらターンしていきます。最初はバランスをとるために手が色々な方向に動いてしまうと思いますが、慣れてくれば上記のことが意識できるはずです。
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